前回、「医療経営を脅かす『未払残業代請求』の実例」にて説明しました、今後の医療経営のリスクとなる『未払残業代請求』について、今回はその対策を説明していきます。
まずは、医療機関で以下のようなことが無いか、早急にチェックしてみて下さい。
(1)『36協定書』を今年は届出していない
(2)タイムカード・出勤簿は使っていない
(3)残業時間は30分単位で計算している
(4)残業時間は、上限を決めて割増賃金を払っている
(5)基本給のみを対象に割増賃金を計算している
(6)年俸制を導入していて割増賃金は払っていない
(7)役職者には全員、割増賃金を払っていない
(8)残業時間が1カ月80時間を超えることもある
これらいずれかに該当する場合には、未払残業代請求や労基署からの是正勧告の対象となる可能性が大きいです。
いずれかに該当する場合も、次のような事前の対応を取ることで、未払残業代請求の対策とすることができます。
(1)労働時間の適正な把握と管理を行う
→タイムカード(手書き出勤簿)の利用、残業申請書による残業時間の把握が基本になります。
(2)各医療機関の実態に合った労働時間制度の導入
→医療機関は診療時間とは別に、準備・片づけも踏まえた労働時間の設定が必要となります。雇用している職員が10名未満の場合は、1週間の所定労働時間を44時間と設定できます。また、所定労働時間が診療時間との関係で、1日8時間や1週間40時間を超える場合は、『1ケ月単位変形労働時間制』を導入します。
(3)割増賃金の計算方法の適正化
→算定基礎、残業時間の算出方法などを正確に理解し、運用することが大切です。
(4)固定的残業代制度の導入
→固定残業手当として、手当によってあらかじめ割増賃金の一部が組み込まれている制度の設計・導入を行います。クリニックですと10時間~20時間で設定することが多くあります。
(5)労働時間に関する協定や、就業規則等の整備・届出を行う。
→36協定は毎年提出し、就業規則や労使協定などで労働時間・休日・休暇など明文化し、届出も行うことで法的な裏付けを確保します。
上記のような対策を通じて、クリニックの労務管理の不安なポイントが解消することが出来ると考えております。