同一労働同一賃金:休職について メモ①(裁判例)

(同一労働同一賃金についての、他のブログ記事は以下より、
 「同一労働同一賃金 記事 まとめページ」)

令和2年4月1日より施行(中小企業は令和3年4月1日より)された、同一労働同一賃金について、問い合わせの多い内容のうち、『休職制度』について、その対応をまとめていきます。

まず、同一労働同一賃金ガイドラインの記載は以下の通りです。
(同一労働同一賃金ガイドラインは以下より
 https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf


(4)病気休職
短時間労働者(有期雇用労働者である場合を除く。)には、通常の労働者と同一の病気休職の取得を認めなければならない。また、有期雇用労働者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて、病気休職の取得を認めなければならない。

(問題とならない例)
A社においては、労働契約の期間が1年である有期雇用労働者であるXについて、病気休職の期間は労働契約の期間が終了する日までとしている。


ガイドラインの内容で、『通常の労働者と同一の病気休職の取得を認め』と有りますが、過去の裁判例などでは、どのような判断になっているかを確認しておく必要が有ると考えます。

裁判例では、休職制度に差を設けることについて、労働契約法20条に抵触するか判断が分かれ
①不合理、
②正社員のとの間に、期間等に一定の差異があってもよいが、それには限度がある
③一定の更新を重ねている有期契約労働者には、同一の適用を認めなければ不合理である
のようになっていますので、
方向性としては、パート・有期契約にも休職制度を導入する方向で検討していきつつ、その制度の内容については、今後の裁判の積み重ねで、最高裁判決までいったものを踏まえて、内容の詳細を決めていくということでも良いと考えます。

休職制度についての裁判例の代表的なものとして、以下の3つのものが参考になると思われます。
(1)日本郵便(東京)事件(東京高判平30.12.13労判1198.45)
 待遇差:正社員 → 私傷病に有給の病気休暇が付与
     有期の時給制契約社員 → 無給の病気休暇が1年度で10日付与

東京高裁の判決のポイント
・不合理では無いとした部分
「長期雇用を前提とした正社員に対し日数の制限なく病気休暇を認めているのに対し、契約期間が限定され短時間勤務の者も含まれる時給制契約社員に対し病気休暇を1年度において10日の範囲内で認めている労働条件の相違は、その日数の点においては、不合理であると評価することができない」

・不合理であるとした部分
「正社員に対し私傷病の場合は有給とし、時給制契約社員に対し無給としている相違は、不合理であると評価する」

(まとめ)
※休暇の期間・日数の相違はOK、休暇に対して有給・無給の差を設けるのは不合理

(2)日本郵便(大阪)事件(大阪高判平31.1.24労判1197.5)
待遇差は上記(1)に同じ

大阪高裁の判決のポイント
・不合理では無いとした部分
「長期雇用を前提とする正社員と原則として短期雇用を前提とする本件契約社員との間で、病気休暇について異なる制度や運用を採用すること自体は、相応の合理性があるというべきであり、一審被告における本件契約社員と本件比較対象正社員との間で、病気休暇の期間やその間有給とするか否かについての相違が存在することは、直ちに不合理であると評価することはできない」

・不合理で有るとした部分
「(契約期間が5年を超えている一部の原告について)有期労働契約を反復して更新し、改正後の労契法施行日である平成25年4月1日時点で、契約期間を通算した期間が既に5年を超えているから、前期病気休暇の期間及びその間の有給・無給の相違を設けることは、不合理というべきである」

(まとめ)
※長期雇用と短期雇用の制度に差を設けることはOK、ただし雇用期間が5年を超える場合は相違は不合理

(3)大阪医科薬科大学事件(大阪高判平31.2.15労判1199.5)
待遇差:正職員 私傷病欠勤 6か月は有給、その後、休職に入り休職給として2割支給有り
    アルバイト職員 制度適用なし

・不合理ではないとした部分
「正職員とアルバイト職員の、長期間継続した就労を行うことの可能性、それに対する期待についての本来的な相違を考慮すると、被控訴人の正職員とアルバイト職員との間において、私傷病により就労をすることができない期間の賃金の支給や休職給の支給について一定の相違があること自体は、一概に不合理とまではいえない」

・不合理であるとした部分
「アルバイト職員も契約期間の更新はされるので、その限度では一定期間の継続した就労もし得る。アルバイト職員であってもフルタイムで勤務し、一定の習熟をした者については、被控訴人の職務に対する貢献の度合いもそれなりに存するものといえ、一概に代替性が高いとはいい難い部分もあり得る。そのようなアルバイト職員には生活保障の必要性があることも否定し難いことからすると、アルバイト職員であるというだけで、一律に私傷病による欠勤中の賃金支給や休職給の支給を行わないことには、合理性があるとはいいがたい」

「私傷病による賃金支給について1か月分、休職給の支給につき2か月分(合計3か月、雇用期間1年の4分の1)を下回る支給しかしないときは、正職員との労働条件の相違が不合理である」

(まとめ)
※雇用体系の違いにより、適用する制度に相違があることは認められる範囲が有るが、その差の程度により不合理と判断される。

・ご意見、ご提案、ご質問、ご確認等につきましては、お気軽にコメントを入れて頂いたり、メール(info@moriyama-sr.com)に頂けましたら、その内容を確認し、修正していきたいと考えております。(なお、個別事業所の具体的な個別案件についての問い合わせには、別途お問い合わせ頂けますと幸いです。)

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