同一労働同一賃金:法定外休暇・特別休暇について メモ①(裁判例)

(同一労働同一賃金についての、他のブログ記事は以下より、
 「同一労働同一賃金 記事 まとめページ」)

同一労働同一賃金対応において、『法定外休暇・特別休暇』についての差は多くの企業で起こっているかと思われます。相談される内容ととしても件数は非常に多いですね。

ケースとしては多いのは、正社員には夏季特別休暇として3日とかの有給の特別休暇を与えているのに対し、有期契約社員・パートには与えていないというような内容になります。

今回の同一労働同一賃金のガイドラインでは以下のように記載されています。
(同一労働同一賃金ガイドラインは以下より
 https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf


(5)法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)であって、勤続期間に応じて取得を認めているもの

 法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)であって、勤続期間に応じて取得を認めているものについて、通常の労働者と同一の勤続期間である短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)を付与しなければならない。なお、期間の定めのある労働契約を更新している場合には、当初の労働契約の開始時から通算して勤続期間を評価することを要する。

(問題とならない例)
A社においては、長期勤続者を対象とするリフレッシュ休暇について、業務に従事した時間全体を通じた貢献に対する報償という趣旨で付与していることから、通常の労働者であるXに対しては、勤続10 年で3日、20 年で5日、30 年で7日の休暇を付与しており、短時間労働者であるYに対しては、所定労働時間に比例した日数を付与している。」

ガイドラインの内容で、『同一の法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)を付与』と有りますが、過去の裁判例などでは、どのような判断になっているかを確認しておく必要が有ると考えます。

休職制度についての裁判例の代表的なものとして、以下の2つのものが参考になると思われます。

(1)日本郵便(東京・大阪)事件(東京高判平30.12.13労判1198.45、大阪高判平31.1.24労判1197.5)
 待遇差:正社員 → 夏期・冬期に在籍期間に応じて3日ないし1日の有給の休暇を付与
     有期の時給制契約社員 → 付与なし

東京高裁の判決のポイント
・不合理では無いとした部分
「(大阪高裁)長期雇用を前提とする正社員と、原則として短期雇用を前提とする本件契約社員との間で、異なる制度や運用を採用すること自体は、相応の合理性があるというべきであり、本件比較対象正社員に対して付与される夏期冬期休暇が本件契約社員に対して付与されないという相違が存在することは、直ちに不合理であると評価することはできない。」

・不合理であるとした部分
「(東京高裁)正社員に対して夏期冬期休暇を付与する一方で、契約社員に対してこれを付与しないという労働条件の相違は不合理」
「(大阪高裁)通算契約期間が5年を超えた者についてのみ、夏期冬期休暇を付与しないことは不合理」

(2)大阪医科薬科大学事件(大阪地判平30.1.24労判1175.5、大阪高判平31.2.15労判1199.5)
待遇差:正職員 → 夏期に5日間の夏季特別休暇を付与
    アルバイト職員 → 付与なし

・不合理でないとした部分
「正職員は、フルタイムでの長期にわたる継続雇用を前提としていること、時間外労働も多く、このような就労実態を踏まえると、正職員に対しては、1年に一度、夏期に5日間のまとまった有給休暇を付与し、心身のリフレッシュを図らせることには十分な必要性及び合理性が認められ、他方、原告を含むアルバイト職員については、その労働条件や就労実態に照らしても、これらの必要性があるとは認めがたい」

・不合理であるとした部分
「確かに正職員は、長期にわたり継続してフルタイムで就労することが想定されており、時間外労働も相対的に長いことから1年に1度、夏期に5日のまとまった有給休暇を付与することには意味がある。しかし、アルバイト職員であってもフルタイムで勤務している者は、職務の違いや多少の労働時間(時間外勤務を含む)の相違はあるにせよ、夏期に相当程度の疲労を感ずるに至ることは想像に難くない。そうであれば、少なくとも、年間を通してフルタイムで勤務しているアルバイト職員に対し、正職員と同様の夏季特別休暇を付与しないことは不合理であるというほかない」

(まとめ)
・法定外年休・特別休暇は、その付与の目的・性質を、勤続への報償又は総労働時間を通じた貢献への報償といった形で判断できるか否かが重要になってくると考えられます。
 今後、最高裁の判断が出てくる部分にもなると思われますので、その判断を待って対策を検討することも一つの対応策となります。

(2)日本郵便(大阪)事件(大阪高判平31.1.24労判1197.5)
待遇差は上記(1)に同じ

大阪高裁の判決のポイント
・不合理では無いとした部分
「長期雇用を前提とする正社員と原則として短期雇用を前提とする本件契約社員との間で、病気休暇について異なる制度や運用を採用すること自体は、相応の合理性があるというべきであり、一審被告における本件契約社員と本件比較対象正社員との間で、病気休暇の期間やその間有給とするか否かについての相違が存在することは、直ちに不合理であると評価することはできない」

・不合理で有るとした部分
「(契約期間が5年を超えている一部の原告について)有期労働契約を反復して更新し、改正後の労契法施行日である平成25年4月1日時点で、契約期間を通算した期間が既に5年を超えているから、前期病気休暇の期間及びその間の有給・無給の相違を設けることは、不合理というべきである」

(まとめ)
※長期雇用と短期雇用の制度に差を設けることはOK、ただし雇用期間が5年を超える場合は相違は不合理

(3)大阪医科薬科大学事件(大阪高判平31.2.15労判1199.5)
待遇差:正職員 私傷病欠勤 6か月は有給、その後、休職に入り休職給として2割支給有り
    アルバイト職員 制度適用なし

・不合理ではないとした部分
「正職員とアルバイト職員の、長期間継続した就労を行うことの可能性、それに対する期待についての本来的な相違を考慮すると、被控訴人の正職員とアルバイト職員との間において、私傷病により就労をすることができない期間の賃金の支給や休職給の支給について一定の相違があること自体は、一概に不合理とまではいえない」

・不合理であるとした部分
「アルバイト職員も契約期間の更新はされるので、その限度では一定期間の継続した就労もし得る。アルバイト職員であってもフルタイムで勤務し、一定の習熟をした者については、被控訴人の職務に対する貢献の度合いもそれなりに存するものといえ、一概に代替性が高いとはいい難い部分もあり得る。そのようなアルバイト職員には生活保障の必要性があることも否定し難いことからすると、アルバイト職員であるというだけで、一律に私傷病による欠勤中の賃金支給や休職給の支給を行わないことには、合理性があるとはいいがたい」

「私傷病による賃金支給について1か月分、休職給の支給につき2か月分(合計3か月、雇用期間1年の4分の1)を下回る支給しかしないときは、正職員との労働条件の相違が不合理である」

(まとめ)
※雇用体系の違いにより、適用する制度に相違があることは認められる範囲が有るが、その差の程度により不合理と判断される。

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