就業規則の不利益変更

就業規則の不利益変更を行う場合には、下記の2つの要件を満たすことが求められます。

(1)就業規則の変更内容が合理的であること

(2)変更後の就業規則を労働者に周知させること

 

上記(1)の『変更内容が合理的』であるかどうかの判断は、労働契約法10条により規定された下記の判断要素にて、合理性の有無を判断することになります。

①労働者の受ける不利益の程度

②労働条件の変更の必要性

③変更後の就業規則の内容の相当性

④労働組合等との交渉の状況

⑤その他の就業規則の変更に係る事情

 

上記の件を、もう少し具体的にみていきます。

 

①労働者の受ける不利益の程度

個々の労働者が受ける具体的な不利益(退職金の減額など)の程度を考慮することになります。従業員の受ける不利益の程度が高い場合には、他の判断要素で補強しないと不利益変更が合理的と言えなくなります。

 

②労働条件の変更の必要性

現在の労働条件の変更の必要性に迫られている、具体的な事情を考慮することになります。例えば、法律の要求に伴い労働条件を変更する必要が生じた場合、合併により労働条件の統一の必要が生じた場合、または企業の経営が悪化し破綻に瀕しているような場合などには、不利益の合理性が認められやすいと考えらえます。そのほかの事情については、不利益変更の内容や不利益の程度との関係で、合理性が判断されることになります。

 

③変更後の就業規則の内容の相当性

相当性は、変更により影響を受ける対象者の範囲、経過措置の有無・内容、代償措置その他これに関連する他の労働条件の改善状況などを考慮することになります。

 

④労働組合等との交渉の状況

就業規則の変更に際して、労働者側に対して十分な説明・交渉・合意形成といった手続きが行われたかを考慮されることになります。

 

⑤その他の就業規則の変更に係る事情

上記①から④以外の事情として、労働契約法11条では、労働基準法の定めに従い労働者代表の意見聴取および、行政官庁への届出という、就業規則の変更手続きを求めており、この手続を行うことが、就業規則変更に係る事情のとして考慮されます。

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