遅刻・早退・欠勤をする職員に対して、給与面および指導・懲戒処分などの対応について

(1)遅刻・早退・欠勤等に対する賃金控除

早退・欠勤等に対する賃金控除は、現実に労務提供がなされていない場合に、ノーワークノーペイの原則に従って行われるものであり、制裁というものではありません。

ただし、30分未満の遅刻・早退を30分に切り上げて賃金控除すると定めている場合や、労務を提供しなかった時間に関わりなく、一定の金額を定めて賃金から控除する場合には、『減給』の制裁に当たります。

『減給』については、労働基準法91条において減給出来る金額の上限が定められています。使用者は、1回の非違行為に対して、平均賃金の1日分の半額を超えて減給することはできず、また、数回の非違行為に対して減給を行う場合であっても、一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えて減給することは出来ません。

これを超える部分については、次月以降の賃金から『減給』しなければいけません。

(2)勤怠不良の職員に対してどのような懲戒処分が可能か

注意・指導・懲戒処分については、まず、病院・医院において勤怠に関するルールを規定し、勤怠ルールを守れない場合には処分を行うことを、懲戒規定として就業規則に定め、ルールを周知しておくことが重要になります。

上記の通り定めたルールを踏まえ、職員に対して遅刻・欠勤の説明を求め、その説明が合理的でない場合、職員に対して第一ステップとして、指導という形で改善を求めます。

この指導は、『指導書』という書面で残しておいてください。

改善の機会を与えないまま懲戒処分や解雇処分を行った場合、人事権の濫用だと訴えられるリスクが高まります。

(3)勤怠が改善されない場合の対応

改善の機会を与えても欠勤等の勤怠が改善されない場合、解雇も含めた懲戒処分を検討します。ただし、勤怠が改善されないというだけで、直ちに懲戒処分が可能となるわけではありません。懲戒処分が、「労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、懲戒権の濫用となり、懲戒処分が無効とされます(労働契約法15条)。

病院・医院としては、職員の勤怠不良については、その都度、注意や指導を行い、その記録を保管して職員の勤怠不良の状況を明らかにできるようにしておくことが重要となります。

注意・指導の繰り返しを行い、その後『警告書』(書式例)という形で、懲戒処分も有り得る旨の警告を与えます。病院・医院が懲戒処分へ至る手順を適切に踏んでいること証明する意味もあります。

また、懲戒処分を行う場合、軽い処分から重い処分へ段階を踏むことが重要です。改善指導→懲戒処分の警告→軽い懲戒処分(けん責)→重い懲戒処分(減給・出勤停止)→最後の処分として「解雇」という手順を取って頂くことが、懲戒処分を正当化する重要な根拠となります。

(4)降格・降職等に伴う給与減額時の注意点

降格・降職等による賃金の引下げは、職務変更に伴って当然に賃金が変動する賃金制度(役職給制度や職能資格給制度、職務等級制度など)が採用されている場合、このような賃金制度の適用の結果にすぎませんので、制裁としての賃金引き下げである『減給』には該当しません。

ただし、このような賃金制度が存在しない場合には、降格・降職等と賃金引下げとは、連動するものではありませんから、懲戒処分としての降格・降職等とともに賃金の引下げをおこなうことは『減給』に該当することになります。

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