職員入社時に行うべき必要な手続きについて

入社時に行うべき必要な手続きは、労働条件通知書(雇用契約書)および誓約書等の取り交わしの他に、(Ⅰ)クリニック単位で定める「入社時の提出書類」の確認、(Ⅱ)雇用保険・社会保険等手続、(Ⅲ)入社時健康診断が必要になります。

(Ⅰ)クリニック単位で定める「入社時提出書類」

各クリニックにおいて、就業規則に以下のように定めが有る場合が多く、その内容を確認します。また、身元保証書は、現金の取扱いや機械設備などへ故意・重過失による損害が有った場合に対応できるようにしておくことがリスク回避にもつながります。

 

就業規則記載例

(採用決定時の提出書類)

第○条 新たに職員となった者は、当院の指定した日までに次の書類を提出しなければならない。ただし、当院が認めた場合は、提出期限を延長し、又は提出書類の一部を省略することができる。

(1) 誓約書

(2) 身元保証書

(3) 住民票記載事項の証明書

(4) 源泉徴収票(入社の年に給与所得のあった者に限る。)

(5) 年金手帳(既に交付を受けている者に限る。)

(6) 雇用保険被保険者証(既に交付を受けている者に限る。)

(7) 給与所得の扶養控除等(異動)申告書

(8) 健康保険被扶養者届(被扶養者がいる者に限る。)

(9) 個人番号提供書

(10) その他法人が必要とする書類(賃金振込同意書など)

2 前項各号に掲げるいずれかの書類の提出を拒んだ者は、採用を取り消す。

3 第1項各号の提出書類の記載事項に変更が生じたときは、速やかに書面で当院にこれを届け出なければならない。

(身元保証)

第〇条 身元保証人は、独立の生計を営んでいる成年者であって当院が適当と認める者2名とし、うち1名は、親権者又は親族人とする。ただし、これに該当する者がいないときは、当院が身元保証人としてふさわしいと認めた者1名を身元保証人とすることができる。

2 身元保証の期間は5年間とし、当院が特に必要と認めた場合、その身元保証の期間の更新を求めることができる。

3 職員が当院の規則又は指示を適切に遵守しなかったことにより当院に損害を与えたときは、当院は身元保証人に対し、その損害を賠償させることができる。

4 当院は、職員に次の各号のいずれかの事情が生じたときは、身元保証人に対しその旨を遅滞なく通知するものとする。

(1) 職員の職務遂行が不適切又は不誠実であることにより、身元保証人の責任問題を引き起こすおそれがあると認められるとき

(2) 職員の業務・業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度又は勤務地の異動により、身元保証人の職員に対する監督が困難になり、又は責任が加重されるおそれがあると認められるとき

5 身元保証人は、前項の通知を受けた場合、将来に向かって身元保証契約を解除することができる。

6 職員が身元保証人を変更するときは、第1項の要件を具備する者を選任し、速やかに当院と身元保証契約を締結する手続きを行わなければならない。

 

(Ⅱ)雇用保険・社会保険等手続

上記の入社時提出書類の中に、「雇用保険被保険者証」、「年金手帳」、「健康保険被扶養者届」をもとに、入社した職員の雇用保険手続・社会保険手続を以下のルールに基づき行います。

(1)雇用保険資格取得手続

事業所で働く正規雇用の職員は、すべて雇用保険に加入する義務があります。これまで、加入者は65歳未満という年齢制限がありましたが、2017年1月1日以降、制度改正によって年齢制限がなくなりました。つまり、現在は65歳以上の職員も雇用保険への加入が必要です。ちなみに、正規雇用の場合は雇用保険の加入に雇用契約書の有無は問われません。たとえ試用期間中であっても、報酬が払われていれば雇用保険の加入対象になります。

雇用保険に加入できる非正規雇用者(パート・アルバイト)は、週の所定労働時間が20時間以上で、継続して31日以上雇用される見込みのある者です。特に雇用期間が決まっていない場合や、雇用契約の更新により31日以上続けて働くことができる場合、当初は31日未満だった雇用契約が延長により31日以上になった場合なども、雇用保険への加入が必要です。

雇用保険資格取得届は、管轄のハローワークに、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに、添付書類として、賃金台帳・労働者名簿・タイムカード(出勤簿)・雇用契約書などを提出します。

雇用保険資格取得届が完了しますと、下記の書類が交付されます。

ⅰ.職員に交付するもの

雇用保険被保険者証

雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)

ⅱ.事業主が保管するもの

雇用保険被保険者資格取得確認通知書(事業主通知用)

※職員へは、必ず交付するようにしましょう。

 

(2)社会保険資格取得手続

健康保険・厚生年金保険では、クリニック単位で適用事業所となっている場合、その事業所に常時使用される職員(事業主のみの場合を含む)は、国籍や性別、賃金の額等に関係なく、すべて被保険者となります。(原則として、70歳以上の人は健康保険のみの加入となります。)

常時使用される人とは、正規雇用の職員および、週30時間以上の勤務により働くパート職員となります。※従業員501人以上の事業所に勤務し週の所定労働時間が20時間以上など一定の条件を満たす「短時間労働者」に該当する場合は、週20時間以上が基準となります。

資格取得届は、管轄の年金事務所(事務センター)に、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届を提出します。

社会保険の標準報酬月額の決定には、給与として支給する基本給および諸手当の他、通勤費も含めてとどけでする必要が有りますので、注意してください。

資格取得届の提出後は、年金事務所より、「標準報酬決定通知書」が送付されますので、その標準報酬をもとに給与から控除することになります。

扶養家族の居る職員は、「被扶養者(異動)届」を提出します。また、配偶者が扶養の対象者の場合は、「国民年金第3号被保険者該当(種別変更)届」も一緒に提出するようにしてください。

被扶養者の基準は以下の通り定められています。

《被扶養者の範囲》

被保険者と同居している必要がない者

・配偶者

・子、孫および兄弟姉妹

・父母、祖父母などの直系尊属

被保険者と同居していることが必要な者

・上記1.以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)

・内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)

(1)収入要件

年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満)かつ

同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(*)

別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

※年間収入とは、過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であること。)

 

(Ⅲ)入社時健康診断

労働安全衛生法(以下、安衛法)に法律によって、使用者(クリニック)には健康診断の実施の義務が規定されています。また、一定の人数を超える場合には健康診断の結果を報告する義務もあります。

雇入時健康診断は、常時使用する職員を雇い入れる時に実施するもので、雇い入れの直前もしくは直後に行ってください。

必ずしも全員に全ての項目を実施する義務があるのではなく、医師が行う健康診断を受けてから3カ月を経過しない人については、その人が直前の健康診断の結果を証明する書面を提出した場合には、それに相当する項目については省略できます。雇入時健康診断の結果は、労働基準監督署長への報告は不要です。

ここでいう「常時使用される職員」には、下記2つの条件を両方とも満たす短時間労働者も含みます。

・期間の定めのない労働契約により使用される者。

・1週間の労働時間数が、同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間数の4分の3以上ある者。

 

健康診断項目は次の通りとなります。

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査 (赤血球数、血色素量)
  7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
  8. 血中脂質検査(LDL コレステロール、HDL コレステロール、血清トリグリセライド)
  9. 血糖検査
  10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  11. 心電図検査(安静時心電図検査)

 

以上で説明しましたように入社時手続きを確認して頂き、労務管理を適切に行ってください。

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