Q:職員採用時の雇用契約書には、『試用期間』が設けられているが、『試用期間』はどのような期間となるのでしょうか。また、その期間は有期契約とすることが求められるのでしょうか。

多くのクリニックが、採用後に一定の試用期間を設定し(通常3~6カ月程度、ただし、試用期間の長さに法的な制限は無い。)、入職した職員の適格性を観察・評価しています。試用期間は有期契約とし、仮採用で、試用期間満了時に本採用とする、という扱いも多く見られます。

試用期間の法的意味は、以下の通りとなります。

※採用した職員について一定期間業務に就かせて、その期間中にその者の勤務成績、勤務態度、業務能力、健康状態などを判断し、本採用とするかどうかを判断する期間。不適格と判断したときは解雇できるという契約『解約権留保付労働契約』が成立していると考えられています。

 

では、期間の定めの無い雇用契約において、試用期間が満了した際に、本採用を行うか本採用拒否するかという問題になりますが、試用期間満了時に本採用しないということは、労働契約の解約の問題すなわち『解雇』の問題ということになり、解雇権濫用法理によって、客観的合理性と社会的相当性の2つがなければ法的に無効となります。また、試用期間における留保解約権に基づく解雇は、(本採用後の)通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められると考えられております。

実際に就労を開始した後、能力面など職員としての適格性に欠けると判断するための、試用期間中の判断基準としては、以下の項目により判断していくことになります。

(1)勤務成績不良:出勤率及び無断欠勤等

(2)勤務態度不良:言動及び協調性等

(3)業務不適格:業務に対する適性及び能力等

(4)健康状態不適格:健康管理上業務の適性及び継続的就業を考慮

(5)その他:総合的に判断

 

ただし、たとえ解雇の制限度合いが本採用後に比べて弱いとしても、留保解約権の行使が当然に認められるわけではない点に留意すべきで、試用期間中の解雇について、適格性を有しないと認めることはできないとして解雇権濫用で無効であると判断した判例も有ります。

 

また、クリニックによっては、最初、期間の定めのある労働契約(有期契約)を締結して採用し、就労させる中で適格性等に問題がないことが確認できた場合に『期間の定めのない』労働契約に移行する(変更する)という扱いをしている例も見られます。このような場合に、当初の有期契約の期間が満了した際にそのまま雇用関係を終了させることは許されるのかという問題が有りますが、有期契約の原則からすれば、期間満了で労働契約関係が終了することは当然ともいえそうですが、まず、いわゆる雇止め法理(解雇権濫用法理(の類推適用)によって、雇用関係を終了させることが許されないとされる場合がありえます 。

このような法的な制約からも、有期契約の方が試用期間からの本採用の拒否が行いやすいケースも有りますが、有期契約・無期契約にかかわらず、「試用期間中の判断基準」を明確にし、適切な労務管理を行って頂くことが求められてきます。

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