Q:職員採用時の面接から入社までの流れにおいて、必要な手続や準備しておく書類はどうのようなものが有りますか。

A:毎年1月から4月には新入職員の採用・入職が多くなる時期になります。労務管理は採用段階から様々な書面により、労働条件や働き方を確認していくことが、昨今のような労使間のトラブルが増えている現状においては、より重要度が増してくるものと考えられます。特に、採用面接時には、限られた時間・回数により採用の可否を判断するため、面談時アンケートの活用などが求められます。

以下に、採用面談から入社時までの手続の流れと、その詳細を説明します。

(1)面接1回目:『面接時アンケート・申告書』(応募者記入用)と面接ヒアリングシートの準備 → 2次面接へ

(2)面接2回目:『労働条件確認書』の準備 → 内定

(3)入社日(もしくは入社前に郵送):労働条件通知書(雇用契約書)、誓約書、秘密保持誓約書、身元保証書等入社時押印書類の準備、就業規則等就業ルールの説明

 

(1)面接1回目

① 『面接時アンケート・申告書』の準備について

面接時に応募者から、会話として聞き出せる情報では、採用の可否やその人の求める働き方を把握することが困難であるため、アンケート形式により、「可能な勤務時間」「保有資格」「希望する職種」「希望する労働条件」「既往歴」などを面接開始前に記載しておいてもらい、それらをもとに面接をスタートする基礎資料とします。

履歴書や職務経歴書は、他クリニックの応募も踏まえた内容となっているため、より、クリニックへの応募に沿った、内容を確認していきます。

 

② 『面接ヒアリングシート』の準備について

面接時間はクリニック・応募者ともに非常に限られた時間で、採用の可否の判断をする必要が有り、クリニックとして、面接時に何を重要視して確認していくのかを整理しておくことが求められます。例えば、「経験重視」とした場合に、どのような経験をクリニックとして求めていて、その経験の有無や保有しているスキルを判断するための質問をどれだけ準備しておくか。ということになります。

上記のように、面接1回目で応募者から多くの情報を取得できるかどうかは、法人の準備次第で大きく変わってきます。

 

(2)面接2回目

①『労働条件確認書』の準備について

内定前に面接2回目を行っていくことは、入社時の労務トラブルを予防するためにも重要な機会となります。応募者に内定を出すに当たっての判断として、特に労働条件(給与・労働時間・休日)及び、管理職採用については役職名・役割に関しては、今後の雇用契約の重要な判断基準になるため、クリニック・応募者ともに、この時点で確認しておくことが重要と考えられます。

この機会を設けずに、1回目の面接で内定を出して、入社日を迎えた時点でいざ、労働条件の確認となると、それまでに共有していなかった細かい条件面での認識の相違が、一気に出てきて、不信感から労務トラブルに発展しやすいケースとなります。

 

(3)入社日(もしくは入社前に郵送)取付書類について

①『労働条件通知書』について

労働条件の明示は、労働契約の締結時、労働条件について単に口頭による合意だけでは、後日トラブルになりやすいため、トラブル防止のためにも労働基準法第15にて労働条件の重要な事項について書面による明示を規定しております。

・ 労働条件明示事項(書面交付が必要な事項)

ⅰ.労働契約の期間

ⅱ.就業の場所、従事する業務の内容

ⅲ.始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、  交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

ⅳ.賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項

ⅴ.退職に関する事項(解雇の事由を含む)

・ 労働条件明示事項(口頭でもよい事項)

ⅰ.昇給に関する事項 ※

ⅱ.退職手当の定めが適用される職員の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項 ※

ⅲ.臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項 ※

ⅳ.職員に負担される食費、作業用品その他に関する事項

ⅴ.安全・衛生に関する事項

ⅵ.職業訓練に関する事項

ⅶ.災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

ⅷ.表彰、制裁に関する事項

ⅸ.休職に関する事項

※パートタイマー(短時間職員)については、パートタイム労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無について、文書の交付等による労働条件明示が必要です。

 

②『誓約書』等のその他書類について

入職時に職員から取り付ける労働条件通知書(雇用契約書)以外の書類は、各クリニックにより就業規則等に定めている内容になりますが、労務トラブルの予防という視点から、『誓約書』は必ず取得しておいて頂きたいです。

誓約書の内容は以下のような項目が加わっていればと思います。

ⅰ.貴院の就業規則その他諸規程を遵守し、誠実に勤務致します。

ⅱ.上司の指示に従い、職務に精励致します。

ⅲ.貴院の信用と名誉を汚すような言動、行動は致しません。

ⅳ.貴院で知り得た顧客の個人情報、職員の個人情報等に関して、貴院の許可なく如何なる方法をもってしても、外部に開示、漏洩もしくは使用致しません。たとえ退職後においても同様に遵守致します。

ⅴ.業務上の機密に関して、貴院の許可なく、如何なる方法をもってしても、外部に開示、漏洩もしくは使用致しません。たとえ退職後においても同様に遵守致します。

ⅵ.故意または重大な過失によって貴院に損害を与えたときは、賠償の責を負います。

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