クリニックでの有給休暇の運用方法について

『有給休暇』の法律上の定めについて、先日、説明致しました。有給休暇は職員側の強い権利であることを確認して頂いたと思います。

今回は、クリニックにおける有給休暇の実務上の運用について、事例を踏まえてご案内していきたいと考えております。

クリニックの規模にもよりますが、看護師・受付事務共に限られた人数で運営しているケースが多く、職員さんが希望するだけの有給休暇を取得することがクリニック運営上難しく、2年経過し消滅してしまい、不平不満のもとになったり、消滅する前に駆け込みで有給休暇の取得をし、クリニックの運営上問題になったりということが起こります。

そうした不平不満を予防し、クリニックの運営に影響しないように、以下の2つの対策を講じることをお薦めしております。

1.有給休暇の消滅した日数に対して、『特別手当』を支給

2.有給休暇の『計画的付与』により、消化を促す

 

まず、「1.有給休暇の消滅した日数に対して、『特別手当』を支給」から説明します。

 

職員が権利として持っている有給休暇を買い上げ、日数を減らす行為そのものは違法となっております。

「昭30.11.30 基収4718号

年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて年次有給休暇の日数を減じ、又は請求された日数を与えないことは(労働基準法の)第39条違反である。」

ただし、有給休暇が2年経過し消滅した分に対して、慰労の意味を込めて『特別手当』として支給することは違法とはなりません。(ただし、消滅分に対して何らかの手当を支給する義務はありません)

 

次に、「2.有給休暇の『計画的付与』により、消化を促す」について説明します。

計画的付与は、労働基準法39条(有給休暇)に定めがあります。

「年次有給休暇の計画的付与は、労使協定で年次有給休暇を与える時季に関する定めをした場合で、年次有給休暇のうち5日を超える部分(繰越し分を含みます)に限ります。

付与方法としては、例えばクリニック全体の休業による一斉付与、年休計画表による個人別付与などが考えられます。」

『計画的付与』のポイントは、

① 労使協定の締結

② 職員が持っている有給休暇のうち、5日分は本人が自由に使えるようにし、それを超える日数分は計画的付与の制度で消化を進めることが可能

③ 有給休暇の消化を、夏季休暇・年末年始休暇等にも活用できる

という点に有ります。

また、クリニックの診療科目によっては、繁忙期と閑散期が出てきますので、閑散期に有給休暇の取得を促し、順次、有給休暇が消化できるようにしていくことも一つの案になってきます。

 

クリニックの運営がうまく回ることが重要ですので、有給休暇の権利を押さえつつ、クリニック合った運用を検討して頂けるよう事例を紹介させて頂きました。

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