『いじめ・嫌がらせ』は事業主である院長が、『安全配慮義務違反』を問われ、損害賠償請求をされるリスク(使用者責任(民法715条))も有るので、適切な対応が必要となる。また、加害者の責任は次の通りとなる。
刑事上の責任:強制わいせつ罪・名誉毀損罪・侮辱罪・暴行罪・傷害罪
民事上の責任:不法行為(民法709条)にもとづく損害賠償責任
就業上の処置:就業規則に基づく懲戒処分
厚生労働省が把握している、民事上の個別労働相談件数は、『いじめ・嫌がらせ』が一番多く、平成27年度では66,566件(全体の22.4%)となっており、毎年増加している。『いじめ・嫌がらせ』はいわゆる『ハラスメント』であり、人の尊厳を傷つけ、精神的・肉体的な苦痛を与えるものとして、程度の差、人による差があり、ハラスメントをされている側が不快であったり、傷ついたりという状態になった時点で、ハラスメントと見なされるリスクが有る。
対策としては以下の点を進めることが重要となる。
①研修にて、事例(似たような話)を踏まえたハラスメントの内容・ハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、周知・啓発すること
②行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等に規定し、周知・啓発すること
③事実関係を迅速かつ正確に確認すること
④事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置をそれぞれ適切に行うこと
⑤再発防止に向けた措置を講ずること
⑥相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
⑦相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益取り扱いを行ってはならない旨を定め、周知すること、
対策を講じた後は、定期的に被害者・加害者双方からヒアリングを行い、『いじめ・嫌がらせ』が再発していないかの確認をしていくことが重要となる。